ローマ法王とは?
ローマ法王であるフランシス法王が11月23日から26日まで38年ぶりに来日しました。
今回は、その意味とローマ法王とバチカンに関することを記していきます。
ローマ法王はイタリアのローマにあるバチカン市国という、世界最小国家の元首になります。
世界70億人の人口のうち21億人という気の遠くなるようなキリスト教徒がおり、ルター派であるプロテスタントがその半数で、残りの半数がカトリックなので、全世界に10憶人の信者がいることになります。
そのカトリックの頂点にローマ法王はいるので、小さい国ではありますが、マンパワーは世界最高といっても過言ではありません。
世界のどの情報機関よりも正確な情報が信者から吸い上げられています。
つまり、ローマ法王はアメリカやイギリス、ロシアなどの情報機関以上に情報を持っていることになるのです。
バチカン市国の情報力
アメリカは、大量破壊兵器を保持していることを理由にイラクに侵攻しましたが、バチカンはその情報が虚偽であったことを知っていたことを後に判明させています。
アメリカは衛星の写真などによって確認したとのことですが、バチカンはヒューマンソースによってその情報を獲得しているのです。
機械がもたらす情報よりも、人間のもたらす情報のほうが正確であったことになります。
つまり、ローマ法王およびバチカン市国は、情報戦でも先進国に見劣りしない情報量を誇っており、決して侮れない国家なのです。
ただし、世界の平和と愛の使者であるバチカンは軍隊や経済力を持たないので、力やお金の行使に頼らず、会話と相手の尊重によって成り立っている国になります。
そもそもバチカンという国は、世界のキリスト教信者のための総本山で、活動目的はカトリックの布教と信者の保護が一番になります。
そして、広義では世界の平和と愛を宗教間の対立なく行うことが目的の国です。
イラク戦争でも情報が上がったのは、キリスト教徒をどうやって守るかという議論から派生したものになります。
ローマ法王の影響力
シリア国内にも10%ほどのキリスト教カトリック教徒がいますので、最近ではアサド政権に対して空爆を行う際の決定に反対しています。
目的は、キリスト教徒に危害を与えるためです。
実際に米英は、さまざまな事情はあったのですが、その空爆をやりませんでした。
のちに欧米がシリア空爆を決定した際には、バチカンは支持しました。
これは、キリスト教徒がISに迫害されており、その迫害から逃れるためには空爆は有効だと判断したからです。
バチカンが賛成すると欧米、NATO軍はすぐさま空爆を行いました。
このように、バチカンおよびローマ法王は、世界に21億人の信者がいることを背景に、国際社会においては絶大な影響力を持っています。
法王の訪韓と訪日
今回の来日の目的は、まず2014年に安倍首相がローマ法王と面会した際に、訪日を要請をしたことから始まっています。
2014年にローマ法王は韓国を訪問しており、当時の韓国はアメリカ各地に従軍慰安婦像などを設置し、国際社会において自国の正しさをアピールしていたため、この対抗と考えるのが一般的です。
ただし、勘違いしてほしくはないのですが、訪韓時に法王は韓国の方を持つような発言は一切していません。
バチカンおよび法王はオフィシャルの場では常に公平中立を保ち、どちらかに肩入れをするようなことはありません。
訪日よりも訪韓のほうが早かったのは、韓国は国民の3割がカトリックであり、また大統領であった朴槿恵も敬虔なカトリックであったこともあります。
対する日本のカトリックは全人口の0.1%程度であり、カトリックの熱心な国とは到底言えない状況です。
ですから、いくら安倍首相が訪日を要請したとしても、もともとがバチカンはカトリックの布教と信者の保護が第一義なので、どうしても遅くなっただけの話です。
加えて韓国訪問後に、バチカンのマネーロンダリング問題や性的虐待問題が発覚し、その対処のために、法王の訪日が遅れたというのが実態になります。
今回の来日の目的
法王並びにバチカンは、韓国への対抗ではなく、日本に大いに期待を抱いているので、訪日が実現したという側面があります。
まず法王の個人的な想いが一番にくると思いますが、これは後述するとして、バチカンはモラルの国である点を誇りにしています。
つまり、いかなるときも、軍隊や圧力によって関係を維持するのではなく、誰にでも門戸を開き、対話によって双方の問題を解決するという姿勢は、ずっと前の法王の時代から方針として受け継がれています。
そして平和憲法から、日本はバチカンと並ぶ平和と対話の国であるというのが法王およびバチカンの認識です。
それを期待した来日であり、韓国に対抗したという狭い料簡での訪問ではありません。
フランシスコ法王とイエズス会
フランシスコ法王はイエズス会の司祭になります。
イエズス会というと日本ではあまりにもザビエルが有名になりますが、もともとは軍隊の性格を持つ会派になります。
中世以降ヨーロッパは戦乱の時代であり、今のような平和な社会ではないときに生まれた会派になります。
つまり、愛と平和を訴えるカトリックにしても、戦わざるを得ない時代があったのです。
こういう会派にいますので、軍隊らしく非常にルールには厳しいのです。
例えば、フランシスコ法王の着任直後にバチカン銀行のマネーロンダリングが発覚しました。
このマネロンには多くの外交官が関わり、その銀行の責任者を追放し、透明性を確保しています。
今までのバチカンであれば考えられないような対応であり、ルールに厳しい法王であることを旗幟鮮明にしています。
マフィアも法王には震え上がる
イタリアのマフィアに関しては、非道なことを行えば問答無用に破門にしています。
日本では宗教の破門というとそれが酷いことのように感じない人も多いかと思いますが、カトリックの世界では、破門にされると教会への立ち入り禁止、没後の葬儀の拒否、お墓への埋葬も拒否、そして結婚式も拒否されることになります。
つまり、社会への参画を拒否されるのです。
この破門に対して、イタリア中のマフィアが震え上がったそうです。
マフィアといえども社会への参画を拒否されることを嫌うほどのことです。
ローマ法王のパワーの源泉
宗教=悪とする中国とは断交状態が続きましたが、近年、共産党が司祭の任命権の一部をバチカンに譲渡したことから、関係の改善が見られます。
バチカンの力の源泉は教会の司祭の任命権にありますので、そのパワーの源泉が復活したことから関係が改善しているのです。
バチカンや法王が力を発揮できるのは、司祭の任命権や破門に関するものであることを基本的な知識として知ってください。
フランシスコ法王の人となり
このように、現在のフランシスコ法王はルールに関しては非常に厳しい法王になりますが、反対に非常に気さくな法王とも知られています。
例えば、南米出身の初の法王になりますが、アルゼンチンでは警護もつけずに自らスラム街を訪問し、住民からもてなしを受けています。
アルゼンチンのスラム街ではのちにフランシスコがローマ法王になって驚いている人のほうが多数であり、それくらい周囲に対してえらぶらずに柔和な顔をしているという人柄です。
通常の法王は、就任してから年々人気が衰えていくものなのですが、フランシスコ法王の場合、逆に人気が高まっていることが現実です。
現にローマ市内では観光客が年々増え続けているそうです。
こういった側面は、現法王の飾らない人柄と質素倹約という姿勢から派生していると思われます。
アルゼンチンのときと同様、警護もつけずにローマ市内をウロウロしていることもあるそうです。
そして、さまざまなスピーチなどは、日本の政治家なども原稿を丸読みしていますが、ほとんど原稿などを読まずに即興で行っています。
カトリックと同性愛
昨今問題になっている性の問題に対するフランシスコ法王の見解は、同性愛などの性差別は今まで表に出なかっただけの話で、それを認めるような発言をして、周囲をあわてさせたこともあるほどです。
ご存知のように、カトリックでは離婚はご法度ですし、同性愛については人間を踏みにじる行為として許されません。
この伝統を覆して同性愛を認めるような発言を認められないのは、カトリックの考え方です。
このようなお人柄ですから、近現代では最も人気のある法王になるのです。
おそらくこの人気は今後も続くでしょう。
キリスト教と金
ローマに行くと、美術品にはふんだんに金などの光輝くものが使われています。
キリスト教がこよなく金を愛するのは、皆が同じ価値観を持っていることから派生しているのでしょう。
金の価値が世界共通であるように、平和と愛も人類共通の価値観であると記し、この項を締めくくることといたします。
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