今回の総選挙を日本の政治に例えると…
イギリスの総選挙は、弊社の予測通りボリス・ジョンソン首相の保守党が歴史的な勝利を収めました。
ただし、これは選挙前からわかっていたことです。
なぜ、ここまではっきり言えたのかを改めて説明します。
今回のイギリスの総選挙の意味がさっぱりわからないという方のために、卑近な例で考えてみます。
日本の総選挙で二大政党選挙になったとして、一方は安倍首相、もう一方の野党代表は立憲民主党の枝野幸男代表ということにしておきましょう。
どちらが勝つかを考えた場合、安倍首相が勝てば現状が続くでしょうが、枝野代表が首相になったら何が起こるか想像がつきません。
イギリス政治の概況
イギリスの概況を説明します。
保守党のジョンソン首相はブレグジットの推進者であり、彼が勝てばイギリスはブレグジットを達成するということです。
その対立軸は労働党のコービン党首になり、党内の党首選でも勝てないほどの不人気な党首です。
しかも彼は大きな政府を志向しています。
ここが重要なポイントで、ゆりかごから墓場までという過去のイギリスの有名な言葉を実践しようという人です。
しかし、このゆりかごから墓場までを実践したイギリスは、1970年代以降に経済が没落しました。
そこに登場したのがサッチャー首相で、福祉や社会保障の予算を切りまくり、結果としてイギリスを再生させたのです。
この時代を生きている人は、当初は福祉や社会保障の予算の減額に猛烈に反対しましたが、結果として自分の生活が裕福になったことに満足しています。
保守党と労働党の支持層は?
今回の選挙ではブレグジット、つまりジョンソン首相を支持したのは中高年層、一方の労働党の大きな政府、ゆりかごから墓場までのような高福祉、高社会保障を望んだのは若者でした。
イギリスの有権者は、大きい政府になれば自分たちの首を絞めることを理解していたから、見なくたってジョンソンの圧勝はわかっていたのです。
経験が少ない若者は、安心できる労働党を選んだだけです。
その上にコービンは圧倒的な不人気で、高福祉国家なんてもうコリゴリと思っている労働党支持層までもが保守党に投票してしまいました。
支持層を見ていれば、コービンの考え方が全くイギリスに受け入れられるわけがなく、労働党の善戦はあり得なかったのです。
彼が党首を続ける限り、労働党は壊滅的になっていくでしょう。
未来を読むために必要なこと
以上のような知識を持っていれば、今回のイギリスの総選挙など詳しく知らなくてもわかります。
ポイントは戦う相手、日本では立憲民主党の枝野代表になりますが、イギリスはコービンだっただけの話です。
枝野代表は何を考えているのかよくわからない、コービンはイギリスをダメにした高福祉国家にしたい、どちらも勝つ可能性がほとんどないことをやっているわけです。
その上に小選挙区だったら保守党が圧勝になるのは自明です。
テレビやSNSで刺激的なことを言えば炎上しますが、批判している人たちはその人の過去など知らず、しかも自分が絶対正義だと言いながら…。
自分が正しいと思うのであれば、最低限の知識をつけるべきです。
だから若い人に限らず勉強はするべきで、そうすれば世間が言っていることがいかにデタラメなのかわかるし、それが商売や自分の人生にどれほど役に立つのかおわかりになると思います。
そのほかの要因
以下はイギリスの実効為替レートです。
1996年からイギリスの国力が上がっているのかは、EUに加盟したからです。
人の移動の自由の保証、関税の撤廃がEUの加盟条件であり、人の往来を自由にし、関税をなくすと国力が上昇するのです。
識者と称する人たちは、トランプ大統領が今やっている関税障壁を高くすることは国家の成長を止めるので、批判をするのです。
でも、なぜ2008年以降、リーマンショックが収まっても落ち込んだままで、南欧債務危機の2013年以降も停滞したままなのでしょうか?
2013年以降の動きの説明すると、南欧債務危機になって中国が台頭したのでイギリスの国力が台頭したのです。
しかし、中国は2015年のチャイナショックによって国力を落とします。
このときに盛り上がったのがブレグジットで、結果は2016年の国民投票の通りです。
ブレグジットは中国を頼りにした、つまりEUという市場に頼ってもこれ以上の成長は見込めないので新しい市場を目指したのですが、チャイナショックによってその成長が止まってしまった…。
頼りにしようとした中国が没落したことが、今回の混迷の真相になると推測されます。
ブレグジット後の課題
保守党の圧勝でブレグジットは円満に可決すると言われていますが、頼りの中国はちっともダメな状況なのです。
これはトランプ大統領のせいではなく、中国の国内問題です。
中国は、言論の自由も人の移動の自由も貿易の自由も為替の自由も認めていません。
だから何らかの自由を解放しなければ再び成長できないのです。
しかし、今の時点では何の自由も解放しないでしょう。
当面再成長は見込めず、その間はどうするのかという不安がこのブレグジットの混迷であり、今後の課題です。
順調になんかいくわけがない、というのが弊社の見解となります。
このままEUに残留が続いてもいいことなどないので、必ず離脱すると言っていただけの話です。
感情論やジョンソン首相が信用できない、コービンが現実にできないことを言っているということが根拠ではなく、将来が見通せないからまだ混乱は続くと言っているのです。
ブレグジットでイギリスの金融はどうなる?
金の現物取引が活発なのは、現在でもロンドンです。
サッチャー時代に築かれたロンドンの金融街シティが没落すると主張する人がたくさんいますが、それにも懐疑的です。
これからイギリスは、まだまだ成長の余地がある中国とパートナーシップを高めていきます。
ここから再び爆発的に成長するのにはなんらかの制限、つまり言動、行動、資本取引、為替などの規制を撤廃する必要があります。
日本の成長がどん詰まりになっているのは、すべて自由にしてからどん詰まりになったのです。
何かを変えなければ爆発的な成長などなしえませんが、その兆候はありません。
安倍首相によってある程度の成長の道筋はつきましたが、爆発的な成長は無理です。
中国は規制緩和の余地がまだまだあり、資本取引の自由があった場合、中国市場は活性化し、結果、ロンドンの金融街も活性化を取り戻すでしょう。
イギリスと金の関係は?
金に馴染みがあるのがイギリスです。
それはポンドが基軸通貨であったことが要因で、その世界最大の取引をしているのがイギリスの資本家であることに起因しています。
現在も現物取引の最大の市場は金であることを考えると、早々簡単にはロンドンの金融街が廃れることはないでしょう。
理由は金本位制が廃止されて50年、基軸通貨が変わって80年程度の月日が経ちますが、中心地はいまだにロンドンです。
イギリスの市場が今も通貨や金の取引において世界最大規模である理由は、最大の金融市場と比べて規制が緩いことにあります。
中国は今後も拡大するでしょうが、やはり根本が共産主義であることから取引を忌避する投資家が非常に多いと予想されます。
誰しもが認める金融市場はアメリカにありますが、ロンドンが為替と金において世界最大の市場であることは、やはり規制の少なさにあります。
グローバリズムの行き詰まりと今後の展望
もちろん、自由化というのは大事なワードになりますが、それによって得られる果実が年々減少していることに気づいている人は、まだまだ少ないのが現状です。
イギリスの貿易はEUの発展に伴い拡大するのが通常ですが、実際に貿易が拡大しても国力は拡大していません。
行き過ぎたグローバリズムが修正に入っていることに気づいているのは、トランプ大統領くらいです。
トランプ大統領は行き過ぎたグローバリズムを修正するために、関税障壁を多く設定するのです。
結果は思ったほど貿易量は減らないという現実を、経済専門家はレトリックと思い込みによって否定しています。
データを見れば一目瞭然で、これ以上自由化を図っても経済は成長しないのに、どの国も「自由貿易、自由貿易」と腐って食べられないものを信奉しているのです。
つまり、自由化が保証されているイギリス金融の恩恵を受けている金融機関がイギリスから拠点を移す理由は、何が起こるかわからないリスクを回避するポーズにすぎません。
イギリスの自由度は他国にはないものであり、非常に魅力的です。
ブレグジットをやってイギリスがダメになるという論説のほとんどはデタラメであり、多くの人がそれを信じているからあえてここで否定しています。
おそらく今後30年、金の中心はロンドンであり続けるでしょう。
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