この表題を見て「え、これだと金の価格は下がるの?」と思った方は正解です。
アメリカのドルと金利は、今後上昇していくことになるでしょう。
今回は、その解説を行います。
2020年3月4日の金利の動き
早速ですが下記はアメリカ国債1年物の利回りです。
3月入って下落し始めています。
次に下記は10年物のアメリカ国債利回りになります。
3月4日にアメリカFRBが緊急利下げを行いましたので、金利が下がるのは当然です。
そして、翌3月5日の1年物金利はさらに下がっているのに対して、10年物金利は反転上昇をしています。
この意味は何か?
3月4日にFRBが緊急利下げをしたのに続き、3月5日も金利が下がり続けているということは、FRBの委託を受けたNY連銀が国債市場の買いオペをいまだに行っているという意味です。
FRBとは?
FRB(The Federal Reserve Boardの略)は、日本における日銀と同じ、アメリカの中央銀行制度の最高意思決定機関で、日本語で「連邦準備理事会」とも呼ばれます。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%80%A3%E9%82%A6%E6%BA%96%E5%82%99%E5%88%B6%E5%BA%A6
FRBが国債を買うということは、FRBは資金を誘導目標金利を下回ってもお金をジャブジャブに市場に流し込んでいることを意味します。
そのジャブジャブの資金に需要がなければ、金の変動要因の【1】ドルの価格は急落します。
しかし、5日の金価格は上昇するどころか下げています。
金の価格変動要因【2】の金利要因は、1年物は下がっていますので買い材料ですが、10年物は上昇しているので売り材料になります。
つまり、この論旨が間違っているのです。
この論旨のどこに間違いがあるかを探るのが今回のテーマになります。
需給とは?
例えば、スマホが欲しいと思ってもそのスマホが10万円すると聞き、高すぎるのでもう少し待つことにしましょう。
その場合、価格が下がる要因は、
① スマホの供給が増える
② スマホが欲しい人が少なくなる(需要減)
しかありません。
これをドルで考えてみましょう。
3月4日のFRBの緊急利下げによって、ドルは過剰供給になりました。
つまり、ドルの価格が下がるのです。
でも、皆さんはスマホの値段が下がれば、買いたいですよね。
そのスマホの値段が半分の5万円は極端かもしれませんが、仮に8万円になったとしましょう。
そうなれば、欲しくてたまらなかったスマホが20%引きになったのですから、買いますよね。
3月4日に起こったことは、これと同じことです。
今は皆ドルが欲しい
先進国の中でまともな経済をしているのはアメリカだけなので、値段が下がれば皆ドルが欲しいのです。
4日の時点ではドルは需給の観点では売りだったのですが、そこに緊急利下げによって、高かったドルが安く手に入るということで、ひと晩明けた5日はみんな一斉に買ったのです。
そして、需給は一斉に需要超過になってしまいました。
つまり、ドルが高くなったので、5日の入電は若干安かったのです。
需要減から考えると
【2】のあなたの欲しいスマホの人気がなくなり、価格が下がるという側面について考えてみましょう。
あなたが欲しいのはアップルのiPhoneの最新機種で、これ以外はダメと信じています。
※僕はAndroid派です
現在の世界情勢と一緒で、世界には160くらいの国があるそうですが、一番安全安心ができる国は、やはり金融市場が発達している米欧日の金融市場です。
そのうち日欧はマイナス金利で、さらに昨今はコロナウイルスの被害もある、ゆえに選択できない、アメリカは日欧と比較して景気もよいし、金利もプラスだということです。
つまり、日米欧の中で信用できるのはアメリカだけなのです。
スマホでいえば、アップル以外のサムスンや華為(ファーウェイ)、日本のメーカーではダメなのです。
すると金=Goldはどうなる?
一時的に弱くなっても、ほかの選択肢はあり得ないのですから、ディスカウントされればすぐに買い手がつくのが現在のドル。
つまり、日欧がダメなうちは、勝手に投資家はドルを選好します。
なぜなら、日本やヨーロッパのコロナ政策を見れば、アメリカが安全安心だからです。
つまり、ドルが買われるのだから、金は将来的に下がると言えるのです。
金利面での考察
冒頭で、金利は短期金利がさらなる下落、長期金利は上昇になっていることを確認しました。
1年物の金利は、ここ最近では最低になっていることが上記のグラフで確認できます。
借金をしたい人にとっては、この最低金利で借り受けすることができるのであれば借りたいですよね。
でも、そのお金の貸与期間は1年ではなく、10年の恩恵を受けたほうがいいですよね。
つまり、1年物で金利をつけてもらい、10年物でお金を借りるというのが3月5日の入電の意味になります。
要するに、短期金利はそのまま下がったけど、長期金利は借入を申しこむ人が多くなったから反転したのです。
アメリカの現況
日本でも金利は低下していますが、このお金を借金する人はいますよね。
もちろん、コロナで自粛になっていても、工場や店舗の家賃は発生しますし、少しでもお金を稼がなくてはいけませんので、儲からないのに人は雇わなくてはいけません。
つまり、資金が足りなくなるので、こういう人たちは一斉に銀行借り入れを行います。
でも、そのお金が何かを生み出すかと言われれば、生み出しません。
ところがアメリカの場合、景気がよく、日欧と比較すればコロナの影響は軽微です。
お金を借りたら、借金の清算ではなく、休業補償に充てるわけでもありません。
さらにお金を儲けるために投資をするのです。
これを設備投資といい、工場のラインを増設したり、研究開発をしたりする資金です。
ゆえに景気の拡大が続けば続くほど、アメリカの資金需要は増大し、金利は上昇します。
日本の場合は?
日本は、金利が安くて借金するのには助かるのですが、その返済は今後も厳しくなると言えます。
返す当てのないお金を借りるので、資金需要は下がる。
故に金利は下がります。
つまり、同じお金を供給しても、
- アメリカの場合はお金がお金を生み出すことに資金が使われる
- 日本では使ったらお仕舞いという用途
に使われるのです。
ゆえにドルも上昇するけど金利も上昇することになります。
そうなると、金の価格はどうなりますか?
※宜しければ下記もご覧ください。
金・プラチナ・パラジウムや銀、貴金属・レアメタルの価格予想の仕方【5】-4つの要因からの予測-https://mrtzzz.com/blog/2018/10/16/how_to_predict_prices_of_gold_precious_metals_and_rare_metals/
円建ての金価格は円安によって上昇しますが、値段はドル建て金価格に追随しますので、円安でも円建て金価格は遅れて下がるという構図になります。
つまり、ここからの金は上昇要因がないのです。
金利が最低レベルまで下がっても新高値を超すことができないのですから、下がる他ないでしょう。
これが現時点での推察となります。
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