経済危機が起こる理由
まず世間一般はこのことを理解していない場合が非常に多いため、改めて冒頭で説明させていただきますが、経済危機が起こるというのには、必ずその時にドルの価値が変化をしています。
今回、ドルの価値が上昇をしたからアルゼンチンを筆頭に、トルコ、ベネゼェラ、ブラジルなどで経済危機が起こっているのです。
この原因は元を辿ればリーマンショックです。
リーマンショックの結果、アメリカの金利はゼロになったのです。
金利がつかない時にアメリカドルが高い訳もなく、ドルが売られて安くなるのは誰にでもわかる話です。
でも現状のアメリカドルは非常に高くなっているということが、何となく想像がつくでしょうか。
ドルの価値が変動する理由
理由は簡単です。
投資家というものは、お金を預けておくと金利が有利に働く国を常に探しています。
つまりリーマンショックで恐慌に陥ったアメリカに資金を置くより、新興国にお金を預けた方が、リスクはあるが金利は高い。
だから、アメリカドルを売って新興国通貨を買うのです。
今はアメリカドルが高くなっているのでドルを買って、新興国通貨を売るのです。
反対に金はドルが売られている時は高く、ドルが買われている時に金は売られます。
つまり経済危機が起こる時は、必ずドルの価値が変化をしている時に起こるのです。
要するに世界は、アメリカに資金が流入してくる時は景気がいいのですが、逆に今はアメリカの資金が還流(レパトリ)しているのですから、資金流出が過多な国が経済危機に見舞われるのです。
その代表がアルゼンチンやトルコ、ブラジルです。
金相場がおかしい状況
現在、金が本当であれば売られなくてはいけないフェーズに入っているのに、何故か下がらない状況が続いています。
今、ドル建ての金は何年ぶりかの安値をつけていますが、間もなくまた元のレンジに戻ると思います。
ドルの価値が高まっている=金相場は下がってよい筈なのにです。
一つ例を出しましょう。
トルコの中央銀行保有量
ここは金の纏わるサイトなので、そのトルコ中央銀行の金の保有量の推移をお出ししましょう。
2018年1-3月期に大量の金をもっていたのが、4-6月期に金の保有量を大幅に減らしているのがわかると思います。
合わせて、トルコリラとアメリカドルの為替チャートを添付します。
これはリラドルの相場なので、ドル円と同様、リラ安になると値段はチャートの上のほうにいきます。
月足になりますので、最後のほうの2018/4-6月にリラが大幅に安くなることはおわかりになると思います。
つまりトルコリラが大幅安になった時に、中央銀行の保有量を大きく減らしていることがわかると思います。
経済危機と中央銀行の金保有量
今回の経済危機というのはアメリカドルの金利が上昇し、そしてアメリカドルの価値が上昇したことから起こったということは前段でご説明した通りです。
リーマンショック後にアメリカの金利がゼロになり、そして今、トランプ政権の元アメリカドルは強くなり、そして金利も上昇したから、リーマンショック後にトルコに流れ込んできたお金が、現在はトルコからアメリカへお金が流れ戻っているからトルコリラは売られているのです。
参考:トルコGDP
リーマンショックの発生が2006年で、2006年以降にトルコ経済が大幅に成長しているのがわかると思います。
2000年からの成長は、ドル安からアメリカから大幅に資金が流出したので、いわゆるBRICSブームにのり、トルコも成長しました。
このグラフでは、2017年の成長が発表されていないのはおわかりだと思いますが、2017年は2016年よりも減速をしていることはおわかりになると思います。
噂だけで国は倒産する
経済危機に陥る国からは、投資家はその国の通貨を売って、その他の国の通貨にお金を変える行動に出ます。
よく考えればわかると思いますが、日本が倒産の危機が叫ばれたら、みなさんどうしますか?
商品や不動産、金など存在そのものに価値があるものを買います。
なぜなら日本政府が倒れると、その国の現金など単なる紙切れになってしまうからです。
その国のお金は倒産危機なのですから他の外国にお金に変えてしまえ、となるのは当然のことです。
その結果、大幅なトルコリラ安が発生をしました。
ですから、トルコ政府は、トルコからお金が出ていかないように対策を講じました。
実際に倒産の危機がなくても、人のうわさや無責任の報道でもそういう可能性が起こることはあり得ます。
極端な話は、銀行の取り付け騒ぎなどは、倒産の危機がなくても噂だけで、みなが銀行預金の引き出しに動き、倒産する可能性が全くなかったのに、実際に倒産をしてしまった銀行など歴史をみれば星の数ほどあります。
そのトルコ政府が倒産するという噂の真偽はともかく、とにかく今の状態を放置しておけば、リラは売られ続け、その結果、倒産の危機がなくても実際に倒産してしまう可能性があります。
そこでトルコ政府は、為替市場に介入をするのです。
トルコからの資金流出の防衛策
でも貧乏な国は、国に貯金がない。
そこで何を使うか?
トルコリラの価値を担保するために中央銀行においてある金を売却してドルを得て、そして為替市場ではドルを売ってリラを買うという通貨の防衛策に出ます。
よく日本では日本銀行による為替市場への介入と報道されますが、トルコ政府もその日銀のやっていることと同じです。
但し日本は貯金がない訳ではありませんから、外貨準備という貯金を使って介入を行うのです。
トルコ政府の場合、手持ちにお金がない訳ですから、金を売却します。
そのお金でトルコリラを買い、そしてドルを売る。
これで通貨の下落がこれ以上起こらないようにトルコリラを防衛するのです。
同時に自国中央銀行は金利を引き上げ、トルコリラを長い間保有すれば、そのメリットがあることを強調します。
そのトルコリラの防衛がほぼ成功した時期が今になるので、若干トルコリラは上昇してきました。
但し6/24に大統領選挙がありますので、まだこの通貨防衛が成功をしたとはいえません。
国が金を保有する理由
これが、4-6月にトルコ政府が行ったこと。
トルコ中央銀行の金の保有量が減ったのは、トルコ中央銀行にある金を売却して自国通貨防衛を行ったのが理由だったのです。
要するに中央銀行が金を保有しているのは、自分の国の通貨を防衛するために保有をしているという事です。
そしてその通貨が売られ過ぎた場合にはその金を売却して、自国通貨を購入して且つ金利もあげて通貨防衛をする。
この方法は古典的な方法であり、大昔から行われていることです。
過去で言えば、東南アジア通貨危機などは、何故あの様な悲惨な結末になったのかといえば、貯金という外貨準備が尽きたから、あのように多くの国がデフォルトに陥ったのです。
トルコの場合は外貨準備が少なく、(この外貨準備には金も含まれる計算になりますが)資金がトルコから流出すると、投機筋に売り狙いされやすいから、極端に売られたのです。
トルコの経済危機というのは金と密接に関係をしています。
これはどの国でもいえる事と言えるでしょう。
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