年初に原油価格がイラン問題で急騰していた際、当コラムでは急騰よりも急落を問題にしなければいけないと論じていました。
今回は、これが当然のことであるということを説明し、それによるドルレートの動きから金価格相場変動を予想します。
原油安の原因
今回の原油安は、サウジアラビアの増産によって起こったと思っている方が多数です。こちらの記事でもそのように書かれております。
ですが、本当はそうではないと私は考えています。
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2020-03-07/Q6UIDUDWRGG401
引用元:ブルームバーグ
そもそも、石油ショックのころと比較して現在の日本の原油需要はどうなっているのかといえば、需要は半分なのです。
1970年代ころの日本は資源のムダ使いを大々的にやっており、当時30ドルになって大騒ぎをしていたのですが、リーマンショック前には150ドル、そしてついこの間まで50ドル、そして現在20ドルになりました。
そもそも、30ドルだったものが150ドルになったことが異常なのです。
なぜなら中東での産油コストは1ドル程度で、50年前から変わっていません。
本来1ドルのものを150ドルで売るなんて、ボッタクリに感じます。もっと言えば20ドルでもどうかと思っています。
サウジアラビアはなぜ増産したのか?
サウジアラビアはなぜ、この価格低迷の時期にわざわざ増産をしてさらに価格を下げるような努力をするのでしょうか?
答えは、ドルの価値がずっと不変なのかという点にあります。
下記は2020年3月11日までのドルの価値の推移ですが、ドルの価値は不変ではないのです。
では、価格が下落をしているのに、サウジアラビアはなぜ自分の首を絞めるような増産を行ったのでしょうか?
世界の原油需要は増えてはいるが…
まず、日本の需要量が成長している現在でも、1970年代の半分になっていることに注目してください。
世界は毎年3%ほど成長しています。
日本もバブル前まで成長し、途中失われた10、20、30年がありますが、成長をしています。
成長しているのであれば、原油需要は増加すると考えるのが当然ですが、実際は減っているのです。
つまり、工業化や豊かになるごとに原油需要はどんどん減っていきます。
世界の原油需要は今でも増えていますが、日本が歩んだ道のように、いつかは世界の原油需要はしぼむということは想像がつくでしょう。
そこでサウジアラビアは売ったもの勝ちということで増産を決定したと推測できます。
でも、本当の意味は違うのです。
サウジアラビア増産の本当の意味
いつかは売られるから今のうちに売っておけなんて、政治家が考えるわけがありません。
なぜなら将来の展望など見えませんし、今ある収入を減らすなんて国家を運営する者にとってはとんでもないことです。
サウジアラビアは民主主義国家ではありませんが、これが日本のように民主主義であれば政権は打倒されるでしょう。
民主主義ではなくても政敵は必ず存在し、その政敵に倒される可能性が出てきます。
ですから政治家の選択肢は、今の収入を維持しながら将来も展望する政策です。
前述したように原油需要は今増加していますが、将来は必ず減ります。
これはゆるぎない事実です。
価格をできるだけ維持しておきたいのですが、実際は価格破壊に至っています。
原油の値段は下がってもドルの価値を上げれば、数字はものすごい減収になりますが、実質の資産は上昇するのです。
原油価格とドルの価値
計算式で考えれば簡単なことです。
現在、1バレル=20ドルです。
2月くらいまでは、1バレル=50ドルでした。
これで収入を減らさない方法は簡単で、20ドル=50ドルにすればいいのです。
ドルの価値を2.5倍にすれば、20ドル=50ドルになるのです。
上記のアメリカドルの価値が現在120くらいですので、倍の240くらいにすれば、サウジアラビアの収入は変わらないことになります。
つまりこのサウジアラビアの増産の意味から、将来ドルが異常に値上がりをするということを予見していないといけないのです。
この増産から見えてくること
ドル円相場は新型コロナ騒動で102円まで行きましたが、現在108円。
これはドル高を意味します。
このような日本経済に不利なことが起これば、自動的に円高と思っている人が多いですが、現状は円安です。
ドルの価値が上昇すれば、サウジアラビアの数字上の収入は減ることになりますが、実質上は増産しても大儲けになるから増産をするのです。
金の意味と金の価格
金はドル高になると値段を下げる、ドルは金の価格変動要因の第1位の要因です。
つまり、金の価格はこれから下がる可能性が濃厚になりました。
しかし、トランプ大統領が100兆円程度の経済対策を実施したように、アメリカは再び借金まみれです。
金の変動要因の②に金利がありますが、金利の変動要因には政府の債務があります。
政府の債務が増えるということは、ドルの不信任を意味し、その代替である金への容認となります。
ゆえにドル高、金利高になっているので金の価格はまだ下がります。
その一方で、背景にドルへの不信任があるので、金はそれほどまでは下がらないと予想しています。
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