ココ・シャネルがつくり出した伝説の香水「N°5」と「N°19」の魅力
シャネルは世の女性にとって永遠の憧れブランドです。時代にマッチした革新的で斬新なアイテムを生み出してきました。
それは香水部門でも同様で、世界三大調香師のひとりであるジャック・ポルジュがシャネルの3代目専属調香師であることでも知られています。
今回は、数ある香水の中でも最も歴史が古く、世界一有名な香水として名高い「N°5」と、ココ・シャネル最後の傑作であり、彼女のプライベートフレグランスと言われている「N°19」をご紹介します。
目次
ココ・シャネルと香水
ココ・シャネルが世界一有名な香水「N°5」をつくり出す以前は、女性が身につける香りはたったの2種類でした。
一般の女性は、すずらんやローズといった単一の花から抽出したフローラルの香りを身に纏い、動物系香料やジャスミンから抽出したセクシャルで刺激的な香りは売春婦がつける香りとされていました。
当時は、単一の花の香りの香水が主流で、大量の花を消費してつくられた故に高価だったので、限られた人しか買うことが出来ませんでした。
香水のボトルに関しては、アールデコ調の華美な装飾のデザインのものばかりでネーミングも難解なものが主流。香水そのものの在り方にココ・シャネルは憤りを感じていました。
第一次世界大戦後の女性の社会進出を背景に、ココ・シャネルは「私は誰にも真似できない、他の何にも似ていない香りを創りたい」と言って、従来の香りの常識に囚われない時代にあった女性の為の全く新しい香りを広めたいと考えました。
そうして伝説の香水が誕生します。
シャネルN°5
「N°5」はココ・シャネルが1921年に発表した香水です。「世界一有名な香水」と言われる所以をご紹介します。
N°5誕生秘話
従来の香水の常識に憤りを感じていたココ・シャネルは、新しい斬新で革新的な香りを求め調香師のエルネスト・ボーに「女性の香りのする、女性のため香りを創りたい」と言い、新しい香水の開発を依頼しました。
エルネスト・ボーはロシア宮廷の調香師で、後にメゾン初の専属調香師となる人物です。
エルネスト・ボーは人工香料であるアルデヒドを使用し、お花の香りや柑橘系の香り、南仏グラース産のジャスミンなど80種類以上ものエッセンスと調合して心地よい香りを試行錯誤の上つくり出しました。それは単一の花の香りが主流だった当時の常識を超えた複雑な香りでした。
エルネスト・ボーは香水の試作のガラスの小瓶に1〜5番、20〜24番の番号を降ってココ・シャネルの前に並べました。
並べられた中で5番とふられた試作品を選んだことが「N°5」のネーミングの由来と言われていますが、「5」はココ・シャネルにとってラッキーナンバーであったことや、彼女は獅子座生まれだったので5番目の星座だから「5」を選んだと言う説もあります。
ココ・シャネルは「5月5日にドレスコレクションを発表するから、この5番目のサンプルの名前をそのまま使う」と言い、記念すべきメゾン初の香水の名称に採用することになったと言われています。
シャネルN°5の香り
トップノートは南仏のグラース産のネロリ。
ラグジュアリーな女性らしさを感じさせるローズドゥメとジャスミンの香りがもたらすハーモニーは最高にフェミニンで魅惑的な香りです。
人工香料のアルデヒドが軽やかな爽やかさを全体にもたらし、花の香りとマッチします。
まさに、「女性の香りのする女性の為の香り」を表現した「N°5」は、発売から100年経った今でも究極の女性らしさを体現する香りとして愛され続けています。
マリリン・モンローが愛したN°5
「N°5」は世界的に有名な女優マリリン・モンローが愛用していたことでも広く知られています。
1954年、官能的なアイコンであったマリリン・モンローが雑誌「LIFE」誌のインタビューで「寝るときに何を着ているか」と言う質問に「シャネルのN°5を数滴」と答えた有名なエピソード。
マリリン・モンローのこの発言から「N°5」の知名度は一気に上がりました。
以来、伝説として語り継がれてきたこのエピソードですが、1960年にマリ・クレール誌が映画「恋をしましょう」の主演を勤めたマリリン・モンローにインタビューをした際のマリリンの肉声の音源をシャネル社は手に入れて2012年に公開しました。
そのインタビューでマリリンは「シャネルのN°5だけをつけて寝ていることは本当のことだ」と答えていて、伝説となっていた言葉が真実だったことを証明しています。
瓶のデザイン
「N°5」が発売された1920年代、香水の瓶はアール・デコ調の装飾的で華美なデザインのものが主流でした。
そんな中、ココ・シャネルは香りだけでなく、「N°5」のボトルのデザインにもこだわりました。シンプルで無駄がなく、直線的なスクエア型のボトルは他の香水と一線を画していました。
このボトルデザインはパリのヴァンドーム広場からインスピレーションされていて、5番のボトルを上から見た形は、ココ・シャネルが愛したヴァンドーム広場そのものです。
その後、「N°5」の栓は八角形になり、より厚手に改良され時代とともにアレンジが加えられました。そのシンプルで無題のないデザインは普遍的な魅力があり、現在でも愛され続けています。
N°5のバリエーション
1921年に発売された「N°5」は、現在では5種類の香りがあります。
N°5 香水
1921年に発売されたココ・シャネルがつくり出したメゾン初の香水。初代専属調香師エルネスト・ボーによって創り出されました。
80種類のフラワーエッセンスから抽出したフラワーブーケのような女性らしい香りが特徴です。
前述しましたが、マリリン・モンローが愛用していたことでも広く知られていて、「世界一有名な香水」と言われています。
N°5 オードゥ トワレット
「N°5」が発売された3年後の1924年に誕生。こちらも初代専属調香師エルネスト・ボーによってつくり出されました。
「N°5」の香りはそのままにエタノール濃度を薄くし、よりパウダリー感をプラスした軽いつけ心地が特徴です。
N°5 オードゥ パルファム
1986年発売。メゾンにとって3代目となる専属調香師ジャック・ポルジュが「N°5」を新たに解釈。
「N°5」と同じフローラルブーケとアルデヒドの香りに、トップノートにシトラスを加え、ラストノートにバニラを加えたより現代的な香りが特徴です。
N°5 オー プルミエール
2008年発売。3代目専属調香師ジャック・ポルジュがより軽やかな輝きを放つ現代の女性に向けた「N°5」をつくり出しました。
トップノートはイランイランとネロリ。ミドルノートはフローラルの香りに移り、ラストはバニラとムスクの透明感のある女性らしい香りが特徴です。
N°5 ロー オードゥ パルファム
2016年発売。ジャック・ポルジュの息子で、後を継いだ4代目の専属調香師オリヴィエ・ポルジュにってつくられました。
レモンやマンダリン、オレンジといった甘い柑橘系の香りからローズやジャスミンの華やかな花の香りに移るナチュラルでフレッシュな香りが特徴です。
シャネル N°19
「N°5」がココ・シャネルが初めて創り出した伝説の香水だとしたら、「N°19」は彼女の最後の作品で傑作と言われいます。
「N°19」の魅力をご紹介します。
シャネルNo.19誕生秘話
ココ・シャネルが人生最後の傑作として世に送り出した香水「N°19」は1970年に誕生しました。
ココ・シャネルは「N°5」同様に比類ない個性を表現する香りを新たに作ろうと考え、2代目専属調香師アンリ・ロベールにココ・シャネルのプライベートフレグランスを作るよう依頼しました。
生み出されたフレグランスは、ココ・シャネルの誕生日8月19日から「N°19」と名付けられましが、この香水の発表のわずか数週間後にココ・シャネルは永眠しました。
ココ・シャネルの自らの意思を感じさせる、大胆で凛としたこの香りは、彼女がつくり出した最後の傑作となり、発売から50年経ちますが、今も変わらず人々に愛され続けています。
シャネルN°19の香り
「N°19」はアイリスを核としたグリーンフローラルとパウダリーのコントラストが際立つ個性的な香りが特徴的です。
緑をそのまま香りにしたガルバナムが涼やかで、凛としたクールな強い女性を思わす、まさにココ・シャネルが追い求めていた女性像そのものを表現した香りです。
トップノートのグリーンの香りが過ぎ去ると、グラース産のネロリ、ローズドゥメ、アイリスパリダの香りが出現します。
「N°5」が「女性らしさ」を表現した世界一有名な香水なのに対し、「N°19」は「求められる自由で意思の強い女性」を表現しています。
N°19のバリエーション
「N°19」は2020年現在、4種類あります。
N°19 香水
1970年に発表されたココ・シャネル最後の傑作。ガルバナムのグリーンノートが香りの骨格です。
香水はエタノールの濃度が濃いため、少量でもグリーンの香りが長持ちします。
N°19 オードゥ パルファム
「N°19」のいきいきとしたグリーンノートに、フローラルノートが合わさったより華やかな香りが特徴です。
「N°19」よりもエタノール濃度が薄く、より軽いつけ心地です。
N°19 オードゥ トワレット
ガルバナムのグリーンノートにアイリスパリダのパウダリーノートが加わった優しい軽やかな香りが特徴。
エタノール濃度が低く、軽く優しくほんのり香ります。香りの持続する時間も香水やオードトゥパルファムに比べて短い為、気軽につけることが出来ます。
「N°19」のグリーンノートの強さが苦手な方におすすめです。
N°19 プードレ
1970年に誕生した「N°19」を3代目専属調香師ジャック・ポルジュが再解釈して生み出した「N°19プードレ」は2011年に発売されました。
「N°19」同様、グリーンノートに、ネロリ、マンダリンの爽やかさが香り、アイリス パリダがより軽やかに優しく柔らかなパウダリー感のある香りを演出します。時間が経つとアイリスはホワイトムスクに包み込まれ軽やかで心地の良い香りに変化します。
香水のつけ方
「香水は、キスしてほしいところにつけるもの」という言葉をココ・シャネルは残していますが、正しくはどこに付けたら良いのでしょうか。
しっかり香らせたい場合
ココ・シャネルの言葉通り、首すじやデコルテにつけると体温が香水と反応してしっかり香りが発生します。
最もおすすめは手首で、ワンプッシュするだけで脈を打つ鼓動と共に香りが優しく拡がります。
さらにしっかり香らせたい、という場合は手首にワンプッシュした後に首筋にもつけることをおすすめします。
ほんのり香らせたい場合
あまり目立ちたくない場面で香りも控えめにほんのり香らせたい場合は、下半身に香水をつけることをおすすめします。
比較的体温が低く、上がりにくい下半身に香水をつけると、ほんのりと自然に香りを纏うことが出来ます。
おすすめは腰や太ももの内側、膝などにつけることです。
香水の付け方の注意点
香水をつける際は、服の上からではなく必ず清潔な肌の上につけるようにしましょう。
スプレータイプの場合は15〜20㎝離してワンプッシュつけるだけで充分ですが、よりしっかり香らせたければ2プッシュつけることをおすすめします。
香水瓶の場合はつけたい箇所に1滴たらすだけで充分香ります。
まとめ
ココ・シャネルが伝説の「N°5」を生み出して100年経ちますが、「N°5」は世界一有名な香りとして香水部門のトップを走り続けています。
ココ・シャネルは「香水をつけない女性に未来はない」と断言しており、香りがいかに女性にとって重要でファッションの仕上げに必要不可欠であるということを彼女は強く主張しています。
シャネルの香水は万人に受け入れられるような無難な香りではなく、個性や主張が強い香りである為、他ブランドの香水とは一線を画しています。ココ・シャネルが追い求めたまさに「自由で自立した女性らしい女性」を表現した香りです。
なりたい自分になる為にシャネルの香水をまとってみては如何でしょう。
ココ・シャネルのような「自立した意思のある強い女性」に近づくことが出来ますよ。