金価格変動の4つの要因
タイトルは『2020年までの価格予想』としましたが、アウトラインから、大きな範囲での予想になります。
今回の要旨は、今までご説明してきた金の価格変動要因から今後の価格を予想していこう、という試みになります。
今まで、金価格の変動要因の説明をしてきましたが、各要因ごとに価格予想をしてまいります。
具体的には
- ドルの上下動
- インフレ
- 金利
- 財政赤字
これらが金の価格の決定要因です。
去年の今の時期であれば、トランプさんが「ロケットマン」と北朝鮮の代表を評したように、戦争のリスクもありましたが、今はハグをし合う仲です。
このようなご時世に、戦争や事件、テロ、自然災害などは予想しにくいので、事件性のあるものは除外して予測します。
ドルの上下動の理由【1】労働参加率
アメリカは、若年層が爆発的に増える人口ボーナス期に突入しており、現在は、まだ労働参加率は上昇しませんが、ベビーブーマー世代が天寿を全うするころになると、俄然、労働参加率は上昇します。
つまり2030年までは、アメリカの人口や生産人口は増え続け、働き手が増えることになります。
アメリカのような工業国で経済停滞はあり得ません。
逆に言えば、資源国では、人口が増えれば増えるほど、景気の低迷が起きやすいということを念頭に置かなければいけません。
なぜなら、政治が不安定化するからです。
ドルの上下動の理由【2】経済発展との関係
アメリカが経済発展すればドルは強くなる、ということになりますが、話はそう単純ではありません。
ドル経済が強いということは、需給の観点から言えば、あらゆる商品が売れる、つまり需給が引き締まりますので、価格は上昇します。
価格の上昇とはインフレです。
例えばドル円であれば、日本で100円出せば買えるものが、アメリカでは200円であれば、為替レートは1:0.5の関係になります。
為替レートでは、国は違ってもモノとモノの価値は同じ価格になる効果があると考えるからです。
日本で100円出せば買えるものが、景気の良いアメリカでは500円出さなければいけない場合には、為替レートは1:0.2の関係にならないといけません。
前述のように、アメリカの物価が上昇すれば、1:0.5から1:0.2の関係になり、この関係を一言で言い表せば、「ドル安」になります。
つまり物価上昇やインフレが起これば、自然とアメリカドルは安くなるのです。
ドル安は、金買いになるのは、前から説明してきた通りです。
インフレ【1】インフレが発生する2つのケース
前段では、インフレは通貨安を引き起こし、その結果が金高をもたらすと申し上げました。
では、インフレがどういう状態で起こるのかと言いえば、2つのケースが挙げられます。
- 景気浮揚による需給のタイト化から発生するインフレ
- 政府の財政赤字から通貨の信用がなくなるインフレ
1.は前段で説明した通りです。
景気が良くてモノが売れまくり、その結果、余剰在庫がなくなるので、ますます価格が上昇するパターンになります。
2.の場合は、アメリカは恒常的な財政赤字を抱えています。
実は先週、アメリカの予算が上限に達し、議会にて債務上限を超えてもよいという法案が通過しました。
日本では全く報道されていませんが、これはアメリカ経済を語る上で非常に重要なことになります。
インフレ【2】アメリカ政府の債務上限
アメリカ政府の債務上限は、1970年代にアメリカが高インフレに悩まされたときに、長期金利を引き下げるための切り札として可決されました。
1970年代の高インフレも、財政赤字の慢性化が招いた結果であり、21世紀に入っても、アメリカ政府はこの愚行を繰り返そうとしています。
そもそも日本政府のように債務の上限などなく、野放図に予算を拡大しているよりはよほどましですが…。
いくら債務上限を設けたとしても、政府機関が閉鎖されることになれば、議員たちは渋々ながら選挙のために上限を撤廃しなければいけなくなります。
この債務上限の撤廃を繰り返せば、そのうち感覚がマヒしてくるのは必然です。
そうなっていくと1.のインフレの可能性もあり、そして、2.でもアメリカがインフレになる可能性があるのですから、金の価格は下よりも上の可能性が高いのです。
つまり、下の可能性を見出すよりも、上の可能性を見出したほうが確率が高くなるのが必然になります。
金利【1】良いインフレとの関係
金利は結局、インフレと同じことで、インフレと密接にリンクしています。
金利が上昇すると、金を保有していても金には金利がつかないことから、金価格が下がるという論調について考察してみましょう。
金の特長は、人類共通の価値を持っていて、錆びないことです。
逆に、金利がつかないこと、持ち運びがお金に比べて不便なことが短所になります。
この場合も前段でお話しした、良いインフレと悪いインフレと同じことです。
良いインフレ、つまりインフレになれば金利は必然的に上昇します。
皆さんのお給料を上回る物価上昇になれば、生活が苦しくなるのは当たり前です。
金の価格が下がるのは良いインフレの場合であり、現在のアメリカの金利上昇は、賃金>物価上昇となっていますので、金の価格は下がりやすい傾向になります。
金利【2】悪いインフレとの関係
アメリカの物価が、お給料よりも伸びが低ければ、良いインフレになります。
この関係が逆転すれば、遅かれ早かれ不景気循環になるのです。
この場合、物価上昇が行き過ぎているので悪いインフレです。
つまり1.の景気上昇からのインフレをさらに細分化して、賃金と物価の関係性から、良いインフレと悪いインフレに峻別されることになります。
2.の政府の債務拡大からのインフレは、どこまでも悪いインフレであって、そもそも政府の債務を減らしなさいという話になります。
つまりインフレには2種類あり、金利上昇には3種類があるのです。
この3種の金利上昇のうち、金価格が上昇するのは物価上昇>賃金になったときと、政府債務悪化になったときです。
要するにインフレほど、金利上昇は金の買い要因になりませんが、その可能性は現在のアメリカを見ていて捨て切れません。
財政赤字【1】財政赤字と金利の関係
このことは理解が難しいので、さらにわかりやすく書きます。
例えば、あなたがジンバブエやベネズエラのように、物価上昇が10,000%の国の通貨を持ちたいでしょうか。
私は持ちたくありません。
なぜなら物価の上昇が10,000パーセントということは、今年1円のものが来年の同じ時期には1万円になるからです。
お金を持っているくらいなら、商品や資産などを買い、お金を誰かにあげてしまえばいい、という考え方が必然になります。
つまり借金の多い人を誰も信用しないように、借金の多い政府を誰も信用はしないのです。
その国が発行しているお金を誰も持ちたくないから、金利が上昇するのです。
その国に魅力がないから、お金の価値が下がり、相対的にその魅力を保全するために金利が上昇するのです。
財政赤字【2】高金利投資のワナ
高金利通貨投資が昨今、流行していますが、高金利は、信用がないと同じ意味ということがわかっていない人が多過ぎます。
信用がない人は借金を踏み倒す可能性が高いから、信用がない。
その信用を保全するために金利を高くするのです。
もちろんリスクを冒さなければリターンは返ってきませんから、リスクを冒すという発想の人はいいのですが、高金利だから買うという発想は、良い部分しか見ていません。
つまり財政赤字が大きいということは、借金が多い人と同じで、そんな国のお金は信用ができないから金に需要が行き、結果として金価格が上昇するのです。
まとめ【1】金価格上昇の要因しかない
上記の結果をまとめていくと、ドルの上下動、インフレ、金利、財政赤字でも金の価格は上昇する要因しかありません。
金利面においては、賃金>物価上昇(=金利上昇)になれば、好景気を満喫できるのでしょうし、金価格の下落要因になる可能性もあります。
しかし、賃金<物価上昇になれば、不景気になるのが必然で、結果、金価格は上昇します。
金利が上昇していても、金価格は上昇するのです。
つまり、今後の金価格の動向は、金利と賃金の関係がドル建て金価格の関係性に特筆されることになります。
目先はこの関係性が重要になってきます。
まとめ【2】需給関係
今回では、金の価格動向について触れていないことがあります。
物価と賃金の関係を見れば今の金は下がらなければいけないような状態ですが、実際は大きな下げには至っていません。
それは需給関係になります。
この需給がタイトなことが、現在の金価格が下げ渋っている原因にもなります。
ただし、金が腐らず、そして消えてなくなってしまうことがないから、本当の金需給なんて誰にもわからないものです。
しかし、見える範囲での需給でも、金の需給はタイト化していると思います。
次回はこの需給とインフレ、金利、財政赤字、ドル動向を踏まえ、さらに金価格を検証していきます。
そして、最終的には金価格の1年間の予測をしてまいりたいと思います。
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