金の価格変動
金の価格変動の主要因は、ドルの上下動であると以前から言っています。
しかし、ここ最近の動きが非常におかしいので、この件を解説していきます。
金の価格は、ドルの上下動と反比例していると何度も言っています。
まずは、ここ最近の動きを観察してみましょう。
ドルインデックスは通常「ドル円」と、円と比較してドルがいくらであると表示されるように、ユーロやポンド、円などの主要通貨に対してどのくらいの価値があるかを測定した指標です。
つまりドルの総合指数になります。
上記の表を見ると、2018年10月まではドルの価値が下落すれば金は上昇し、ドルが上昇すれば金は下落するという相関関係にあります。
しかし、2018年10月のアメリカ株急落以降、ドルが上昇しているのに、金の価格も上昇しているのです。
ココが本日の中心となります。
金と金利の関係
金は保有していてもインカムゲイン、いわゆる利子や配当が得られないのが常識です。
よって金利が上昇すれば、確実に利子や配当が得られる債券や銀行預金に投資家は資金をシフトします。
つまり、投資家は金を保有していてもインカムゲインを得ることができないので、債券や銀行預金に走ることを意味します。
これもドル価格同様、金の価格が上昇すれば金利は低いままであり、金利が上昇すれば金価格は下落しています。
ところが、2018年10月以降は金の価格も上昇し、金利も上昇しています。
これは、なんらかの異常がマーケットに起こっていることを示す変化になります。
原因の追究1 需給の状況
金の価格はドルの上下動、金利の上下動も重要な要因ですが、ほかのモノと同様に需給もドルの上下動ほどではないのですが重要です。
ドルの価格や金利の上下動にならわない場合、需給の状況を考えるべきだと思います。
昨今の世界情勢は、貿易戦争や中国経済不振によって、需要は増えています。
そして、供給のほうは年々細っているから価格が上昇したと考えることができます。
例えば南アフリカは金や白金、パラジウムなどを生産していますが、南アの鉱業生産は以下の通りです。
このグラフは前年比の数字ですから、マイナスが多いので、南アの鉱山での金属の生産はずっと減り続けていることを示します。
南アの金生産量は現在世界7位で、かつて世界の金の9割を生産していたころと比べるとひどい凋落ぶりです。
つまり、各国の金準備の増加、ETFの買い残増幅によって需要は増えていますが、供給は特に新産金は横ばいから微減にとどまっているため、価格が上昇していると考えることもできます。
ただし、供給には携帯やパソコンから金を取り出すリサイクルもあるので、実数は把握できません。
今回も需給から価格が上昇したと言うのにはデータが不足し過ぎて、金の需給では説明がつかないことになります。
原因の追求2 ドル高の原因
アメリカ株の急落によって、ドルが上昇する意味を考えていきましょう。
アメリカ株急落の結果、投資家が株を手仕舞いして現金に換えたことによってドルの価値が上昇したと考えられます。
よく「株の下落によって、数兆円のお金が株式市場からなくなった」と表現をしますが、これは正しくなく、単に株を手仕舞って現金に交換しただけです。
株を買っていた資金が株式市場から出て行っただけであり、決してお金が消えたわけではありません。
ドルという現金を皆が持つようになれば、ドルの需給から見れば、ドル価格が上昇するのは当然です。
しかし、アメリカ政府は2018年1月から始めた減税政策によって、財政赤字が増えていますので、本来ならドルは下落しなければいけないのです。
ドルの発行者であるアメリカ政府が借金漬けなのですから、返せる見込みは借金の金額や債務率によって変わるのですが、一般的には金額が大きければ大きいほど信用を失います。
現状で財政赤字は巨額になっており、その結果はドル安にならなければいけません。
目先の景気が良くて税収が増えたとしても、借金の巨額さは変わらず、焼石に水で誰も持ちたがらないから金が上昇しドルが下落するのです。
ドルを一時的に所有しても、投資家の心理はすぐに転売したいのが本音でしょう。
ですから、ドルの上昇は蜃気楼と言うこともできます。
原因の追求3 金利との関係
そもそも今回のアメリカ株の急落は金利の上昇が背景です。
その金利上昇の背景は、
- アメリカの物価が上昇したこと
- アメリカ政府の財務基盤の信用剥落
が考えられます。
物価の上昇は、最新のものでは若干下がり気味になっており、金利の急騰は考えられません。
そうなると、金利の急騰の原因は、アメリカ政府の財務基盤の信用剥落ということになります。
この結果を踏まえて
今、貿易戦争や中国、ドイツ経済の不振があるのにはあるのですが、反対に株価は好調です。
すなわち、実態経済は株価を見れば、日本もアメリカも好調なのですが、まだ中国やドイツ経済の不振が際立っていない状態であると言うことができます。
ニューストップに中国の経済不振などが取り上げられるようになれば、日米の株価は一気に急落し、金の価格は上昇することになるでしょう。
「有事のドル買い」という格言がありますが、そのドルはアメリカ財政の赤字をマーケットが嫌っているというのは、おわかりになると思います。
まとめると
需給面では需要は確実に上昇し、生産も減少している可能性が高いです。
「有事のドル買い」がこういった場面で起こるのですが、金利も一緒に上昇してしまっています。
通常ドル買いが起これば、金利は需要が強いので下がるのですが、一緒に上昇してしまっているのです。
となると、今回のドルが上昇しても金の価格が上昇するという根幹は、アメリカ政府の財務基盤にマーケットが不信感を表明していると捉えることができます。
有事の際にアメリカが盤石であれば、ドルが買われますが、リーマンショックのときのように、アメリカの債務危機が叫ばれるようであれば、金は一時的に大きく下がった後、反転急上昇するのです。
今回の場合はリーマンショック同様、アメリカの債務がマーケットから問題視されているのですから、一時的に金が下がっても、また上昇すると見ておけばよいでしょう。
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