オペック総会の開催時期について
オペック総会の開催時期は、毎年6月末と11月末になります。
これは原油の最需要期が12月であり、その次に多いのが7月だからです。
12月は灯油などの暖房油の需要が最大になり、6月は本格的なドライブシーズン入りをするのでガソリンの需要が見込めるからになります。
もちろん、南半球では逆の需給構造です。
これらの需要期を前にオペックが総会を開くのは、需要期前に価格を設定することによって自国の収入を安定させようという狙いがあるのは言うまでもありません。
今回の減産合意の意味とは?
昨年から減産は行われており、去年の11月には減産合意が確認されました。
もちろん景気がよい中での減産合意になるので、12月の価格は高騰したところまではよかったのです。
しかし、例年であれば灯油需要のピークが過ぎる2月から徐々に原油価格は下がってくるのですが、反対に減産合意が生きて下がらなかったということがあります。
つまり、ある程度は減産合意が生きていたということが確認できました。
今回の合意は減産順守の中で価格が上昇した分、その増産を図るというものになります。
では、この合意をどう解釈すればいいのでしょうか?
オペック総会と日本銀行のドル円介入は同じ!?
ドル円相場が一方的に円高方向に傾くと、日本銀行が介入を行う場合があります。
これは「円売りドル買い介入」とニュースで流されるので、皆さんは「天下の日本銀行が円売り介入をするのだから、今後は円安に行くであろう」と言う読みをしますが、そこが根本的な間違いになるのです。
日本銀行は財務省から委託を受けてドル円市場に介入しますが、その目的は為替相場を安定化することにあります。
円高阻止が目的ではなく、円高のペースをゆっくり進行させることが目的なのです。
財務省、日本銀行の意向は、円高を止める気はさらさらなく、いくら介入しても円高の流れは止まらず、その進行が遅くなるだけです。
過去の日本銀行の介入はすべてそうなり、相場が転換して円安になったことはありません。
円高ペースは介入によって緩めることはできますが、円安に反転したことはないのです。
オペック総会の増産、減産の決定はこれと同じことであって、オペック総会の決定があると、世界の投機家が原油価格に注目します。
オペックは価格を安定させたいのですが、結果的に投機資金が原油市場に流れ込み乱高下することになるのです。
オペック減産で過去どうなったか?
そもそも去年の12月にオペックは減産の延長を決定しましたが、景気はどうだったのかと言えば、日米欧ともに株価は新値を更新するような勢いでした。
つまり好景気なのに減産を決定し、結果、値段が高騰したのです。
そして、皆さんもご記憶にあると思いますが、今年の2月上旬に世界的に株価が暴落してあまり景気がよくない状態が続いているのに、2月の原油の不需要期になっても価格は下がらず、株価が急落しても原油価格は下がりませんでした。
このことからオペックの決定は世界の原油需要を満たしていないと判断できるのです。
この現実をオペックの首脳は見ていません。
要するに景気が悪化経過にあり、不需要期入りしても価格が下がらなかったという経過です。
この帰結はオペック首脳が原油在庫にしか着目しておらず、将来の原油需給に関してはわからないこととして決定を下すからです。
結果、日本銀行の為替相場が円安方向に行くと大衆を勘違いさせるように、オペックが減産を決定すると価格が下がり、増産を決定すると価格が上昇するという歴史の繰り返しになります。
つまりオペックは価格の決定支配力を持っていないのに、人々はその影響の大きさを勘違いしているだけなのです。
以上の事から、オペックの目的は価格が上がるペースと下がるペースをゆっくりするということになります。
今回は、冬の暖房油の需要が終わる2月になっても価格が下がらなかったのですから、減産は間違いでした。
価格が上がらないので減産幅の順守ということで増産を決定しただけです。
マーケットをコントロールするのは無理。
皆さんは、リーマンショック前にガソリンを求めて長蛇の列ができたのは記憶にあるでしょうか?
あのころはスタンドでの小売価格の見直しが1ヵ月に1度だったのですが、翌月から価格が10円以上引き上げられることになり長蛇の列ができたのです。
現在では国内スタンドの整理などによって価格見直しは1週間に1回程度になったので大きな混乱はありません。
そしてリーマンショック後に暴落したのは言うまでもありません。
このときにオペックはずっと総会ごとに増産を繰り返したのですが、価格は上昇したままだったのです。
その後、2011年から2014年にオペックは、原油価格が1バレル107ドルまで行ったときにも増産に次ぐ増産を繰り返したのですが、価格は下がることになくさらに上昇し、いつものように暴落しました。
要するにオペックは単に価格を安定させたいだけなのに、周囲の投資家はオペックが石油価格をコントロールしようとしていると考えているのです。
はっきり言えば、どんなに大きい政府や政府機構でも、マーケットの商品価格をコントロールするのは無理です。
日本銀行によるドル円相場介入にしても、投資家のほとんどは日本銀行がその価格をコントロールすることを前提に話をしますが、当の日銀にはその意思はなく、価格を安定させたいだけなのです。
つまり間違えているのは投資家であって、本来の目的の意味を理解していないということになります。
オペックも日銀同様に価格をコントロールしようとしていなく、単に安定化をさせようとしているだけです。
ですから、オペックが動くということは価格が安定するということを意味し、その結果を受けて値段が上下するというのが結局はおかしい、ということを前提に考えなくてはいけないのです。
今後、増産に次ぐ増産をしても原油価格が下がらない!?
先ほど2月は最需要期明けで不需要期になると書きました。
さらに今年の2月の場合は、直近で株価が急落し経済が停滞傾向にあるのに、価格が下がっていないということを完全に想定に入れていません。
彼らは各国の在庫量を見て生産量を調整しているので当然です。
ですからニューヨークの原油先物は、オペックが増産したのにもかかわらずその増産幅ではまだ足りないという判断の下に 価格が上昇しました。
そして2月の景気が下向き加減のときに価格が下がらなかったということを勘案すれば、今回の減産維持は、おそらくリーマンショック前や2011年から2014年まで続いた価格高騰の再来になるであろうと考えられます。
世界景気の現状は一時的に停滞にありますが、長い目で見ればまだまだ成長の余地があり、おそらくリーマンショック前のようなバブル状態に間もなく入っていくでしょう。
そうなると、また増産に次ぐ増産をしても、価格が下がらないような状態になってくると思います。
この証左は、ムニューシン米財務長官の「年末にはアメリカの景気はピークになる」という発言で、大きな流れは世界的な景気拡大というコンセンサスになります。
日本もおそらく相当よくなるでしょう。
以前に「年末にはバブル経済のような状態になっているかもしれない」と言ったことを想定しています。
原油が上がって金が下がるようなことはあるのか?
結論から言えば、長期的に原油価格が上昇しているのに金の値段が下がるようなことは歴史的に見てもあり得ません。
なぜなら、金や原油はドルの裏打ちのような価値・存在そのものだからです。
今までに何度もお話ししたように、万が一金ドルが倒産や破産しそうになったときの保険のような存在です。
アメリカの財政赤字の大きさは周知のとおりですので、お金の王様であるドル、基軸通貨で全財産を持っていれば、一夜にして大金持ちも貧乏人に成り下がるのです。
その不安を解消するために、お金持ちは金に投資をするのです。
つまり存在そのものに価値がある金やプラチナ、パラジウムを保有することによって、ドル消滅の保険をかけているのです。
原油は持ち運びができませんが、保有していれば価値がなくなることがありません。
ドルが万が一消滅しても、原油の価値は人々に有用なものなので価値が残ります。
ですから人々は、金やプラチナのほかに原油にもヘッジするのです。
金と原油の相関関係は金とドルほどではないのですが、一般的には60%程度あるのではないかと言われています。
原油が上がれば金も下がることがないという根拠がこれになります。
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